フジモトマサルさんとナマケモノくんに寄せて


ほんの一年ちょっと前までの私は、本当に何もすることがなかった。
そんな私の横にいてくれた作品たちには深い思い入れがある。
フジモトマサルさんの作品も、そういう大切なものだ。


フジモトさんの作品全てを読んでいるわけではないのだけれど
一番好きなのが「終電車ならとっくに行ってしまった」
エッセイと漫画が交互に載っていて、そのふたつはそこはかとなく
連動しているような、そうでもないような不思議な読み味。
思い出し推敲に思い出し怒りの話は本当によくわかる・・・。
折にふれてはこのエッセイの1本や、この漫画の1コマを思い返す。
そういえば今日だってそうだった。


そしてこの本で何より心惹かれたのは
漫画の方の主人公であるナマケモノくんだ。
心惹かれたというよりは、強い共感を覚えたという方が近いだろう。
特に何かをすることもなく、小さなアパートの一部屋で暮らしている。
その彼が大海原へ小舟を漕ぎ出すラストには、心を揺らされた。


いつかはこのブログで、ちゃんと腰を据えて
フジモトさんの作品について書きたいと思っていたし
これからのフジモトさんの作品とも付き合っていきたかった。
突然すぎる知らせが本当に信じられない。


長らく何もすることがない毎日を送り続けていた私に
ここ一年で、それなりにいろいろ起こったのだけれど
私もあんな風に漕ぎ出せたのだろうか
それとも漕ぎ出せたような気分になっているだけだろうか
日々の中で、そんなことをよく考える。
きっとこれからもそうなのだろう。


フジモトマサルさんに、ナマケモノくんに
心から感謝している。