超人機メタルダー 全話見終えての感想後編

この作品は、それまでのメタルヒーローの王道フォーマットから
新機軸を切り開く為に、色々試みた意欲作なのは確かだと思う。
だけど、見ていてもどかしいというか物足りないというか・・・
たびたびそういう気持ちにさせられた作品でした。
そんなこんなで色々書きたいことがあり、感想も前後編に。


まず、この作品の好きなところから。
まずはとにかくメタルダーのデザインが!デザインがかっこいい!!
赤青基調で左右非対称の色合いは、おそらくキカイダーのオマージュ。
そこに全体的なシャープさが加わっている。
(時代が進んだことで、スーツもよりすっきりした作りが可能になった?)
メカ剥き出しの部分の武骨さと、全体のシャープさがうまく同居して
もうなんともいえないかっこよさが!!
リアルタイム時には普通に見てたのか・・・しかも忘れちゃってたのか。
テンションもっと上げるべきだと、当時の自分に力説したい(笑)
1/6スケールくらいで、現代の造形技術で気合い入った立体が出ないかなぁ。
そして瞬転シーンも、機械と人間の狭間という混然とした感じがいい。


・・・あの別に、デザインのみが大好きというわけではなくて。
何だかんだ、作品通しての雰囲気も好きです。ぼんやりした表現だなぁ。
根底にあるテーマから滲む、作品全体を覆っている雰囲気というのか。


ED曲「タイムリミット」も好きだなぁ。
再会して、漠然と懐かしかったのもこちらだし。
OP曲「君の青春は輝いているか」は名曲として有名で
実際いい曲なのだけど、一か所だけ引っかかるフレーズがあって。
その点に関しては、当時の時代背景も関係しているのだろうと思うけど。
(このあたりはまた長くなりそうだし、エントリ主旨とずれるので省略)
イムリミットかっこいい曲だし、OPとはまた違うかたちで
作品テーマも反映されているよね。


そして、この作品の物足りないところ。
・そのかっこいい主人公を掘り下げ切れなかった
・その為に、テーマへの切り込み方も鋭さに欠けてしまった
私にはそう思える。
この作品は、敵方の群像劇に大いにスポットを当てたところが
魅力の一つとしてよく挙げられる。
確かに、戦う相手を掘り下げることは大切なことだけど・・・
肝心の主人公が、その割を食っていないか?


少なくとも私にはどうしてもそう見える。
1・2話見ると、誕生したばかりの主人公の内面をこれから掘り下げて
人間というものを知っていき、成長していくのだろうと思えたのだけど
話数が進んでも、あんまりその辺は描かれない。
それでいて、敵キャラクターのドラマは次々に入る・・・。
ビッグウェインの回のような「話のメインは敵方の一人に絞り
主人公は最後に戦いの相手として登場するだけ」という
特殊な話が単発で入ることは、試みとして面白いと思う。
ただ序盤の話は、まず主人公を掘り下げて!と言いたくなるものが多かった。
それぞれの背景を持つ敵との戦いの中で、主人公が知っていくことも
確かにあるのだけど、やはり最初はもっと明確に、主人公そのものに
焦点が当たるようなストーリーを描いてほしかったなぁ。
そしてラプソディ回を見るに、流星は古賀博士の息子・竜夫の内面も
少なからず受け継いでいるようだった。
ならばそれぞれの、平和を希求する心にも迫ってほしかった。
音楽を愛した穏やかな竜夫が、戦地へ赴くことになった際の気持ち。
息子が戦死し、開発中の超人機にその姿を模した古賀博士の心情。
古賀博士の登場は1話きりだし、最後まで謎が多いままだったなぁ。
このあたりも描けていたら、流星が戦う理由にもまた繋がったのに。
流星が戦争を意識する台詞自体はたびたびあったのだけど。
あとは、舞というヒロインの存在も、もっと生かせなかっただろうか。
例えばキカイダーでは(私の知ってるキカイダーは原作とアニメ版)
ジローが人間を知っていく過程には、ヒロインのミツコが深く関わっていた。
メタルダー1話は、デザインだけでなく主人公の心の成長の描き方も
キカイダーのオマージュ的なものがあるのかなと思えたけど
それ以後はさほどそういう場面はなかったのは、ちょっと残念だった。


作品の視聴率が振るわない為に、中盤では路線変更があって
普通の勧善懲悪っぽい番組になったことも、残念がられることが多いけど
主人公を掘り下げきれなかった序盤なので、そこまで惜しいとは思えない。
トータルの雰囲気をいうなら、中盤よりは序盤の方が好みだけど
作中の主人公へのベクトル自体なら、中盤の方が向いていたのでは。


打ち切りが決定して以降は、視聴率を意識する必要もなくなるので
終盤ではがらりと序盤の雰囲気に戻って、そこからは面白かったなぁ。
序盤は描写がおざなりだった(少なくともそう見えた)とはいえ
30数話も積み重ねていれば、流星の内面もこちらにある程度わかるし
その上でトップガンダーとの友情が強く描かれたり。
そして終わりが近いので、ゴッドネロスの核心にも一気に近づいて。
一話一話の密度が一気に上がった。


そういえば、ゴッドネロス方面も最後まで不明瞭な部分が多かった。
例えばクールギンの素顔の件も、打ち切りにならなかったら
実はもっと別のドラマが隠されていたのではと思える。
驚きの展開だったのに、残り話数が少ないからか
結局あのあたりはさらっと流されてたよね・・・。
あれが当初の予定通りとはあまり思えないし。
もし影武者というなら、三銃士の鉄仮面的な設定も面白そうだな、とか
あるいは本来ならもっと別の素顔があったりしたのかも、とか。


主人公を、序盤からしっかり掘り下げ描いた上で
当初の予定のまま最後まで行ったら、どんな物語になっていたのかなぁ。
当初の予定通りの物語というのは、どういう媒体においても
難しいものなのだろうなとは思いますが。
特撮作品というのは、それが顕著に現れるジャンルの一つなのかなと
公式チャンネルで色々と並行して視聴していると思います。
これはまた別の話なので切り上げますが。


とにかく、主人公も敵サイドも、掘り下げられそうな部分は沢山あるのに
本編内で生かしきれていなかったように思える。
それがとてももったいなく思えて、こうして何やかんや言いたくなる。
そういう妙な引力は確かに持ってるんですよね、そんな作品でした。
という意識は、この長文からも伝わるとは思いますが(笑)


感想前後編は一応これで終了。
でもメタルダーの話題は、たぶんまた書いたりするよ!
サイズ小さめのフィギュアとか、そのうち紹介する予定。
だってメタルダーのデザインはかっこいいから!