極上美の饗宴 竹内栖鳳の班猫

BSプレミアムの番組 極上美の饗宴、今回取り上げられたのは
竹内栖鳳の「班猫」という、見返り猫が描かれた大正時代の作品で
この絵がもうすごかった・・・!


ぜひ現物も見たくなります。
でも所蔵美術館でも、普段は公開されていない作品だそうで。
今回は番組の為に特別に撮影。
番組見て、ぜひ見に行きたい!と思った人は沢山いるだろうになぁ。
国の重要文化財なのですね。番組内では触れられたっけ?


当時、日本画は西洋画に押され気味で、竹内栖鳳
新しい日本画の表現を模索していたそうだ。
その頃の作品、屏風に描かれた獅子の絵も紹介されていたけど
この作品がまたすごい。リアルで迫力満点のライオン。
それまでの日本画に描かれた獅子といえば、ほぼ架空の生き物だったけど
栖鳳はこの作品のために、わざわざベルギーの動物園に赴き
実際のライオンを見てきたのだそうだ。
しかし、発表当時の評価は芳しくはなかったようで
岸田劉生に、リアリティを追求するなら油絵でいいじゃないか
(紹介されてた正確な言葉は忘れたけど、ざっくり言うとこんなだった)
みたいな感じの批判を受けたのだとか。
外野の批評家でなく、日々表現を追求してるであろう同じ画家が
人様の表現の模索に横から口出さなくたって・・・。
あんな迫力ある絵を見て、思ったことは本当にそれだけだったのかなぁ。
とにかく、それで栖鳳は「単なる写実にとどまらない表現」を
さらに追求してゆくことになる。
この獅子の屏風があるのは栖鳳の晩年の別宅で
ここも普段は公開されていないとのこと。残念。


さて「班猫」の話に戻って・・・
猫の瞳は青みがかった緑色で、とても引き込まれる。
こういう瞳の色の日本猫は、当時はいなかっただろうなと思ったら
やはりそのようで。色から何から現実そのままを描く必要はないですからね。
それもあって、たぶん架空の猫を描いた作品なのだろうなと思ったら
モチーフとなった猫は実際にいたのでした。写真も残ってる。
たまたま出会って一目惚れして、頼み込んで譲り受けたとのこと。


そして、それほどまでに惚れ込んだその猫は
「班猫」を仕上げてしばらく後、栖鳳が東京に出かけ
戻ってきた時にはいなくなっていたのだそうだ。
そのことに対する、栖鳳の言葉も印象的だった。


なんだか、わたしには
あの猫は本物の猫ではなく
誰かから掛け物に描かれた猫を拝借して
それを返したもののような気がしてならない


栖鳳にとってその猫がどういう存在だったのかが、この言葉から伺える。
その思いは「班猫」という作品からも伝わってくるものね・・・。